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涙が出そうになったとき、ぼくらはスタジアムの風を想う・・イギリス映画「シーズンチケット」

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オープニングシーン、暗闇のスタジアムで何やらごそごそしている2人の少年。かれらはスタジアムの芝生をこっそり(掘り起こして)頂いているのだ。翌日のニューカッスル広報が「愚かなる蛮行」とコメント、しかしジェリー(15才)とスーエル(17才)の言い分は「試合の一部になれないならその一部を頂く」。                                     

ふたりはイギリス北東部にあるニューカッスル・アポン・タインに住む貧しい少年。家庭はすでに崩壊同然でジェリーは飲んべえの父のDVから逃げ回る母と姉の3人家族、スーエルは両親が亡く(死んでいるか、捨てられたのか)呆けた爺ちゃんとのふたり暮らしである。学校へは殆ど行かず万引き、喫煙飲酒(時々はヤクも)は常習。すでに社会の最底辺で未来への展望もなく、社会から見放された存在である。しかし彼らには希望がある。「いつかシーズンチケットを手に入れてスタジアムで試合を見るんだ」、ふつうのチケットじゃだめ、「チケットと一緒に何が手に入るかって?・・・それは”リスペクト”だよ。」                     

Photo_3 かれらはそのために酒やタバコとも縁を切り、ありとあらゆる仕事・・犬の散歩の請負い、がらくたの販売etc・・そして万引き・・目的のためには手段を選ばない。しかし苦心惨憺してようやく集めた金は久しぶりに帰宅した父親に横取りされてしまい、お先真っ暗になる。なおシーズンチケットはイギリスでは争奪合戦でなかなか入手できず、代金は一人分約9万円だという。(当時のレートで。G大阪のは現在20万円です。)2人分ともなると彼らにとっては天文学的金額になってしまうのだ。                             

ふたりの住むニューカッスル・アポン・タインはかって石炭産業で栄えたが、現在は廃坑、産業の空洞化もすすみ失業率の高い都市で、何となくうらぶれた町のたたずまいが歩き回る彼らの風情をいっそう切ないものにしている。何とか学校に登校させようとするソーシャルワーカーの先生(おばさん)が「2週間でも登校したらチケットを買ってあげる」といって持ってきたのが何とニューカッスル・ユナイテッドの宿敵サンダーランドの本拠地”スタジアム・オブ・ラPhoto_2
イト”のチケット。落胆しながらも敵地を偵察しに行くふたり。帰りにやはりニューカッスルUの練習場に立ち寄り、あこがれのアラン・シアラーに出会う。(ここでイングランド最高の伝説的ストライカー本人がワンショットのカメオ出演をしている。去年引退)約束どおりイヤイヤ登校したジェリーは体験発表の時間に当てられて 「父さんと初めてサッカーを見にいった日。とても寒い日で父さんのコートで身体をくるまれ、ハーフタイムに暖かい紅茶を買って来てくれた。砂糖2つとたっぷりのミルク・・・。」ーーホントの話なのか、それともジェリーの空想の話なのか。(しかし実はそれはスーエルが以前に話したスーエルの想い出だったのです。ジェリーがそれを自分の想い出にしてしまう気持ちに泣かされます。ふたりがシーズンチケットに託す想いは単なるサッカーのチケットではないことも。)                    

そしてとうとうやむにやまれず?水鉄砲を持って銀行強盗を企むがあっけなく捉えられる。刑罰のかわりに”ボランティア活動”をさせられることになったふたりは高層アパートに住む一人暮らしのおばあさんの家の手伝いに行かされる。                         

Photo_7 そしてラストシーン(ネタバレになりますが)、おばあさんが二人に用意してくれた暖かいミルク入りの紅茶カップを手に持ち、上着を脱いで(チームのユニフォーム姿になって)ベランダに出る。そこは真下にニューカッスルUのホームスタジアムが見下ろせる特等席で今まさに試合中だったのだ。                                           Photo_5

追記:ニューカッスル・アポン・タインとサンダーランドは15Km程しか離れていない隣接都市で古くから石炭の採掘権をめぐって対立してきた。ピューリタン革命では前者が王党派、後者が議会派として軍事衝突まで引き起こした。クロムウェルの下でサンダーランドは大いに産業が発展し、スコットランドやアイルランドからの移民が大量に流入して町は活気づいた。現在でもサンダーランドFCにはアイリッシュの選手が多いそうだ。この2つのチームのダービーマッチは「タイン・ウェア・ダービー」と呼ばれてイングランドでも最も過熱するためフーリガンへの警察の取り締まりは年々強化されているとか。それでも去年で逮捕者50人)なお、ラストのマンションはCGで作った映像だということです。監督はマーク・ハーマン、前作「ブラス」に続いてイギリスの社会的弱者に注ぐ暖かいまなざしは天下一品です。(写真:ニューカッスル・ユナイテッドのホームスタジアム「セント・ジェームズ・パーク」)Photo_9                       

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コメント

罪を犯してでもサッカーが観たい贔屓のチームを応援したいというのだから彼らのサッカーへの思いは本物である。あまりにも生活が貧しく未来に希望がもてないので、サッカーにほんの少しの希望を見ようとしているのであろう。商業主義のサッカーでは彼らの願いはかなわない。

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